重要伝統的建造物群保存地区とは

文化財保護法に規定する文化財種別の一つで、市町村が条例などにより決定した伝統的建造物群保存地区のうち、文化財保護法第144条の規定に基づき、特に価値が高いものを国(文部科学大臣)が選定したものです。

伝統的建造物群保存地区とは城下町・商家町・宿場町・門前町・寺町・鉱山町・港町・農村・漁村などの伝統的建造物群およびこれと一体をなして歴史的風致を形 成している環境を保護するために市町村が定めた地区で、文化財としての建造物を「点」ではなく「面」で保存しようとするもので、保存地区内では社寺・民 家・蔵などの「建築物」はもちろん門・土塀・石垣・水路・墓・石塔・石仏・燈籠などの「工作物」、庭園・生垣・樹木・水路なども特定し保存されています。

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岡山県には以下の3地区があります。

高梁市吹屋伝統的建物群保存地区   鉱山町 (1977518日選定)

倉敷市倉敷川畔伝統的建物群保存地区 商家町 (1979521日選定)

津山市城東伝統的建物群保存地区   商家町 (201387日選定)

 

津山市城東伝統的建造物群保存地区

Y家住宅

before (平成15年)
before (平成15年)
before (平成26年)
before (平成26年)
after  (平成27年3月31日)
after (平成27年3月31日)
after (平成27年11月)
after (平成27年11月)

平成26年度

現況調査

 この建物は江戸末期当初造り酒屋と伝えられて、間口7間、奥行き6間のつし二階建で、平面は2列6室で、1間半のトオリニワと1間のイタノマで構成されていたようである。明治以降に3間半づつの建物になり、西棟は重伝建地区選定前に解体された。

 主屋は間口3間半、奥行き6間、切り妻屋根つし二階建、建築面積88.65㎡、延床面積163.14㎡。2棟の付属屋は建築面積42.70㎡、延床面積97.74㎡。事務所として使用。以前店舗に使われていたときに柱の撤去、下屋根の撤去、パラペット立上げなど大規模な改造が行われている。

保存改修

 2年間に渡り保存改修工事を行った。

1期工事は津山市町並み保存事業として、主屋架構の途中で切られ梁を受け西妻壁の構築と補強を行なった。2期工事は伝建地区保存事業として主屋の構造を根本的修理を行う。蟻害や腐朽した柱・梁・大引を建ったままの入替えと改造時撤去された柱を元の位置に戻し、筋違い、耐震格子を設け構造補強を行なった。(天然乾燥材約10㎥) 基礎はベタRC+石場建とし、時代考証及び外観意匠は文化庁の指導の下、保存改修を行った。

 

外部仕上:屋根いぶし瓦葺き、鎌軒、風切丸

     外壁本漆喰塗、海鼠壁、焼杉板張

建具格子:桧、古色塗(柿渋+弁柄+松煙)

 

店舗設計 -町家Caféさくら-


T家住宅

平成26年度


before
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after
after

現況調査

  間口3間半、奥行き5間半、切り妻屋根つし二階建、建築面積72.41㎡、延床面積123.10㎡、用途は紙類倉庫として使っていた。大屋根、庇屋根とも桟掛瓦葺きである。庇屋根の出は510㎜に切り縮められ、柱も撤去されいる。表より2間のミセノマと座敷は痕跡を残し現況は土間となっており、1間半のトオリニワは裏の中庭まで繫がっている。

  解体調査の結果、床下より出てきたコンクリート造架台跡や製材方法、ホゾ穴などから、大正から昭和初期の頃、幕末期の町家の構造材を使い再建築された建物である。 

保存改修

  ファサードは庇屋根の出幅と柱を当初の位置に戻し2間と1間半の格子戸に、2階は痕跡確認し出格子と耐力壁に修復した。大屋根、庇 屋根とも桟掛けいぶし瓦葺き替え、鎌軒瓦、風切丸を使用した。

  構造補強としては、西妻壁のケラバから雨水が侵入したため蟻害や腐朽した母屋、中引き梁、梁桁、大引きの取替え及び、1階妻壁の内側に耐力壁を設け増設した壁をすべて耐力壁とした。 

店舗設計 -町家cafe お茶処「紬」-


着工前

工程

竣工

津山市城東町並み保存地区

Y家住宅 修理

before
before
after
after

 平成25年度

現況調査

この建物は江戸末期当初、間口7間、奥行き6間のつし二階で造り酒屋でした。平面は2列6室で、1間半のトオリニワと1間のイタノマで構成されていたようである。
今から100年位前に、丁度真ん中で仕切られ3間半づつの別々の建物になっていたが、10年前に西側の建物の屋根が朽ち落ち、所有者の意向で重伝建地区選定直前に解体することになった。

 

構造補強(1期工事)

分離するには解体前に2軒の構造を支える中引き梁や桁をポストで全て支え、歪み防止の筋違いを入れ切り離し、自立できる構造補強を行う。

新設基礎は鉄筋コンクリート布基礎とし、基礎パッキンのうえ桧4寸土台を敷き、登り梁を直接桧4寸柱で支持する。耐力壁は筋違い120*45タスキ掛けとし、N値計算のうえ金物を取付けた。外壁仕上げはラスモルタル塗り下地のうえ破風は漆喰塗り、壁は焼杉板張り仕上げとした。 


造り酒屋K家住宅 修理

before
before
after
after

平成22年度

現在の主屋は総間口11間半、奥行き9間で、間口3間の土間と間口4間の2列の居室から構成されているが、主屋の最も古い部分は東より間口4間半で宝暦2年(1752年)の創建と言われている。現在の表構えは明治の修理改修によるもので、主屋の奥に築かれた望楼も明治期のものである。

今回の保存修理部分は西側より間口2間半、奥行き5間の部分である。調査から対象部分の東妻壁は主屋より独立しているが、西妻壁は小屋組みの途中にあり西側隣家と一体構造の長屋であったと思われる。

保存修理

ファサードは老朽化した大屋根をいぶし桟掛け瓦に下屋根は本瓦に葺き替えを行い、戸袋修繕と壁漆喰塗りの修理を行う。

構造としては雨漏りにより腐朽した野地板と垂木は全面取替え、母屋、桁、胴差は一部取替えを行う。


旧医院K家住宅 修理

before
before
after
after
談話室(旧診察室)
談話室(旧診察室)
カフェ(旧受付・薬局)
カフェ(旧受付・薬局)

平成22年度

 町家主屋は木造2階建てで間口5間、奥行き7間、東より1間半のトオリニワと2列6室で構成され、間口5間の梁せい65cmの胴差は改造により柱が撤去され10m取り放しになっている。西隣の洋館は間口2間、奥行き7間の木造平屋建てで、和小屋組みである。

 町屋は小屋裏の祈祷札により慶応3年(1867年)頃の創建と考えられる。 洋館は医院として大正7年(1918年)に棟梁坂田茂十郎によって建てられた。この時、町家のミセノマの前に式台を設け医院の玄関・待合とし、洋館との間、ミセオクを受付・薬局として大きく改造された。

 平成14年に町家・洋館ともファサードを古色のペンキで塗替え等の改修を行っていたが7年後の平成21年、洋館の土台が腐朽し竹小舞土塗り壁の外壁がズリ落ち、町家も老朽化が進行したため調査を行い、平成22年度に構造補強を伴う修理を行った。

保存修理・改修

洋館部分ファサードは、建具枠やペディメント・ペンダントなどのディティールを忠実に保存し、塗装は写真資料と被膜層の調査をした結果、建築当初と思われるグレーシュピンクに復元した。外壁はラスモルタル塗り下地漆喰塗り、腰壁は既存に習い御影石の洗出し仕上げとした。


F家住宅 修理

before
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after
after

平成22年度

 主屋は間口4間強、奥行き6間半のつし二階建てで幕末期の建物である。平面は東より2間強奥行き3間半と街道より大黒柱までの奥行き2間はマエニワ土間でその奥に1列2室の座敷で構成されている。表構えは大きく改造されており、入口はハネ上げ大戸と雨戸の構成であった。

古くは畳屋を営んでいて、土間上部分2階は職人部屋であったと伝える。

保存修理

東隣家の倒壊に伴い、妻壁、ファサード修理及び大屋根の葺き替え修理を行う。

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