美作の和紙
美作の和紙は、津山を含む岡山県北地方が「美作の国」と呼ばれるようになった奈良時代、朝廷に納められた写経用紙として、「正倉院文書」の「写経勘紙解」(737年頃)に「美作経書」という名称が記されています。すでにこの時代から産地名で記されるほど良質の和紙が作られていました。
横野和紙
1300年の時代を経て、現在、津山市上横野地区の横野川沿いにわずか3軒が「横野和紙」として津山の手漉き和紙の伝統を守っています。「横野和紙」は、三椏100パーセントを原料に主に箔合紙を作っています。箔合紙とは金箔、一枚ごとの間に挟む紙で薄く滑らかで艶があり、腰の強さなどを含め多様な特性を兼ね備えた和紙です。その技術を活かした他の製品としては、便箋、封筒、懐紙、写経用、色紙などもあります。
手漉き和紙の工程
使用例
和の自然塗料
■柿渋
青い未熟の渋柿を絞り発酵させ2~5年熟成させた褐色の液体で主成分は高分子タンニンです。
柿渋には自然発酵ものと酵母発酵ものがあります。自然発酵の柿渋は銀杏や漆のような独特の臭みが
あり紙や布の染色に使います。酵母発酵の柿渋は色が薄くワインのような芳香がし化粧品などに使用
されます。
建築材料としては艶の点で自然発酵の柿渋を使用します。長年寝かせたものの方が深みのある色と艶
を出します。主成分のタンニンにより防虫、防水、防腐、抗菌効果があります。
塗り方
1.木部の埃や汚れを落とします。特に鉄に反応してタンニン鉄となり黒いシミを作るので釘に注意
が必要です。
2.柿渋は水で2~3倍に薄めて使います。
3.刷毛で木目に沿って塗ります。
4.塗ったあと気泡やムラがでた場合はウエス(布)で均一になるように拭き取るます。
5.3と4を2~3回繰り返し仕上げます。
メンテナンス
*風雨にさらされる場所は年1回塗替えるか、桐油、荏胡麻油などを塗りましょう。
施工例
■ベンガラ(弁柄)
ベンガラは酸化第二鉄が主成分とする赤褐色の無機質顔料で着色力・隠蔽力が大きく耐熱性・耐水性・
耐光性・耐酸性・耐アルカリ性のいずれにも優れています。安価で無毒、安全なため木部の塗装と防腐
剤として、左官の顔料、瓦・陶器の着色、サビ止めなど建築材料の他、食品・染料などにも使用されます。
岡山県高梁市吹屋地区はかつて国内唯一の生産地でローハを原料に硫化鉄を焙焼する乾式製法で1965年
頃まで生産されていました。カラーは黒・朱・黄・茶・ダークボルドーなどがあります。
柿渋にベンガラを混ぜて使用する効果
*木の呼吸を妨げません。
*木のヤニ止め効果があります。
*木の表面保護と防水、防虫、防腐、抗菌作用があり耐久性が得られます。
柿渋とベンガラの調合目安
*土台の防虫、防腐を目的とする場合 柿渋+ベンガラ 13:1
・計量には計量カップや計量スプーンを使い、色合いを確認しながら調整してください。
・木目を出す場合やムラを無くすにはウエスで拭き取りを行ってください。
艶を出して更に強く
*柿渋ベンガラを塗り、乾燥後上から柿渋を塗り重ねるとより艶が出ます。
撥水性を増すには
*乾燥後に荏胡麻油、桐油などを塗ると撥水性能がプラスされます。
■ 古色・古色仕上げ
古色とは、絵画・美術品・工芸品・建築などが長い年月を経て色褪せ古びた色合い・風合い、または
その様子のことです。
建築で古色と言えば、伝統的建造物の修復や古民家再生などで新補材に古色を付けて古材との統一を
図る古色仕上げを意味します。古色仕上げには柿渋・ベンガラ・松煙墨・乾性油などを用います。
古色仕上げの調合例
濃いめ 柿渋+ベンガラ+松煙墨 50:1:24
明るめ 柿渋+ベンガラ+松煙墨 26:1:6
・計量には計量カップや計量スプーンを使い、色合いを確認しながら調整してください。
・松煙はアルコール+水(焼酎)で溶かしてから使うと混ざりやすいです。
・木目を出す場合やムラを無くすにはウエスで拭き取りを行ってください。
撥水性を増すには
*乾燥後に荏胡麻油、桐油などを塗ると撥水性能がプラスされます。
■松煙墨
松煙墨はアカマツを直接不完全燃焼をさせ煤を採取します。松煙は細かい粒子の方が高価です。
細かな粒子は赤系黒色で粒子が大きくなるにつれ茶系→紫紺系→青系黒色になります。
施工例
白木の保護
■未晒し蜜蝋ワックス
原材料は蜜蝋と荏胡麻油です。蜜蝋とはミツバチが体内から分泌した蝋(ロウ)成分と唾液でできた
蜂の巣から作られています。未晒し蜜蝋とは化学薬品で漂白していない蜜蝋で自然の蜜蝋はの色は黄
味を帯びた色をしています。安全性の高いワックスなのでお子様がおられる家庭やアレルギーのある
方も安心して使えます。無垢フローリングや建具、家具なども自分たちでDIYすることもできます。
蜜蝋の特徴:なめらかに伸び、木の表面に被膜を作り、防水、防腐に優れています。
荏胡麻油の特徴:木の中に浸透することによって耐水性に優れ、自然の艶がでます。
色:荏胡麻油が浸透して木目が浮き出るような質感に変わります。
匂い:蜜蝋と荏胡麻油の匂いで乾くと消えます。
乾燥:自然素材のため乾燥に半日から1日、冬季は2日かかることがあります。
メンテナンス:水回りや床面は6ヶ月に1回程度塗ってください。
施工例
■乾性油